空想お話日記1(4話集)



シェンムーなDevil May Cry
細い路地裏に中華「味壱」はある。その日は雨で夜の10時を過ぎていた。中国人の店主が私にい言った。
「味わからないね」レンゲを片手にもう一方でイラストを描いているのだ。「食べるか描くかどっちかにするとあるよろしい」
「ダンテを描いてるんだ。なかなかダンディなダンテは難しいね」と鉛筆をテーブルにおいてラーメンを食べ始めた。
青年がいきなりラーメンを食べてる私に「あなたダンテを知っているのですか?教えて下さい!」と頼み込んだのだ。何か深く思いつめてるようだったので話した。「知ってるもなにも・・・ダンテと遊んだ事がないけど黒いヤツだよ」
「黒い車に乗ってはいませんでしたか?」「そこまでは知らん。だけどヤバイよ。あんな黒が似合うクールな殺気の男は見たことないね」「その他には?」
「私が教えられるのはそこまでだ。後はここの店主の陶おじさんに聞いておくれでないかい」
「わかりました」そう言って何やら小さなメモに『藍帝(らんてい)の名を知る者が・・・』と書いた。



2001/11/28 男の熱い友情
作・睦月様からいただきましたvvありがとう

車を降り立った時、空から白いモノが降ってきた。
「雪か・・・」
貴章はそう呟くと、芭月武館の門をくぐった。
片手に持った白百合の花の包みが歩く度にカサカサと鳴る。
その音を聞き、貴章は僅かに眉をしかめた。
(これは余計だったか・・・いや、途中に花屋があったのだから 仕方がない)
今日は、芭月巌の月命日だった。
亡くなって間がないともなれば親族が集まり、法要を行うのが普通であるが、 芭月武館はあまりに静まり返っていた。
貴章は母屋で品の良い老婦人に会った。
老婦人は悲しみと慈しみの混ざったような顔で、 「涼さんなら道場の方に・・・」と言った。
貴章は短く礼を述べ道場へ向かった。
屋外と同じ白息が白く見える程冷え切った薄暗い道場の真ん中に涼はいた。
ぴんと背を伸ばして正座をし、握った両手を膝の上に置いている。
だが・・・僅かに頭が垂れている。
しばし、その様子を眺めてから貴章は静かに声をかけた。
「芭月、今日はおまえの父の月命日だろう。仕事のついでがあったので 立ち寄った」
涼からの返事はなかった。僅かに頭を上下に動かしただけだ。
(やはり・・・な)
そう思った貴章は靴を脱ぎ、道場の中へ足を踏み入れた。
途端、 「来るな!」と、鋭く涼が叫んだ。
顔を伏せているので、どんな表情をしているのかわからない。
けれど、切羽つまった響きがその声にはあった。
「頼む・・・来ないでくれ」
だが、貴章はその言葉を無視した。
そして涼の傍らまでくると、百合の包みと腕にかけていた紙の袋を 下に置き、膝をついた。
「芭月、男は泣くものではない。まして他人の前で悲しみを露にするものでもない。 私は親父にそう教えられた。しかし、例えまことの男であろうとも人である限りは、 悲しみに涙を流すこともあるだろう。だから・・・これを持ってきた」
そう言って貴章は紙袋から取り出した物をそっと、涼の方へ押しやった。
「これでもう誰もお前が泣いているなど・・・いや、悲しんでいるなどとは思うまい。 さぁ、それを被れ、芭月」
涼は言われるまま、震える手でそれをつかむと、頭からすっぽりと被った。
「ありがとう・・・貴章」
涼はようやく顔をあげて貴章の方へと向いた。
そこには、頭の剃り跡も青々しい、ふくぶくとした笑い顔のどじょう髭の男がいた。
「私の愛用の品、その名も「チャンさん」だ。今日はおまえにそれを貸してやろう。 存分に泣くがいい」
貴章は立ち上がり涼に背を向けた。
口元にふっと微かな笑みが浮かぶ。
「似合うぞ、芭月」 そういい残して、貴章は道場を後にした。
表へ出ると本格的に降り始めた雪が白く辺りを包み込んでいた。
春はまだ遠そうである。
(終)


芭月君のクリスマス

クリスマスの一週間前 倉庫での話・・・
芭月「貴章!」
貴章「なんだ?」
後ろポケットから芭月青年が一枚の手作り招待状を出した。
「24日都合が良かったら俺の家に来ないか?クリスマスを祝おうと・・・お前も来いよ!」少し恥ずかしそうに笑った。普通ならば喪に服してる時期なのだが、父が何者かに目の前で命を奪われたとなれば少しでも忘れる時間をと稲さん達が芭月のために準備してくれてるのだ。
貴章は「仕事で忙しいんだ!ガキの相手なんかしてられない!」
「そうか・・・」とガックリ肩を落し招待状を仕舞った

当日 クリスマス・イブ。
最近の芭月の行動が変なので心配してワイワイと友達とが集まってくれた。そんなほのぼのとしたクリスマスを過ごしていたら〜
ブロロロロロロ〜ンと自動車のエンジン音が芭月邸に止まり誰かがガラガラ〜っと玄関を開けた。
近所の子供達と遊んでる三角帽子の芭月が応対に出た。
「あ・・・貴章」貴章が玄関に突っ立っている。
「近くまで寄ったから序でだ・・・」とむっとした顔で言った。クリスマスって楽しいイベントに似合わない男である。
芭月はそんなのは気にしない青年だ。
「なんだ〜来てくれたのか〜ぁ さぁ 上がってくれ。ケーキもあるぞ!シャンパンもあるし」と歓迎したが「いや もう帰る」と今来たのにもかかわらず そっけない態度をとった。まったくコノ気性を考えると迷子になりかねん。そんな気難しい彼を芭月は「あれ?お前の後ろにある物は何だよ それ?」と言うと同時にその物を慌てて背中の奥に隠したが丸見えである。
「親父からだ コレを届に来ただけだ」と赤いリボンに黒い袋の包みを投げるように渡したし、それをキャッチした。
どうも・・これはクリスマス・プレゼントのようだ。
芭月は、へ〜って感じでその場で中身を見た。プレゼントとは幾つになっても嬉しい物である。
中身はゲームソフトだった。子供はゲームソフトと定番である。それが袋に何枚か中に入っていて、それと一緒に・・・
「来たいなら 来たいって言えよぉ!!」
「親父からだぞ!そ、それは!!!」
「芭月君へ〜クリスマスおめでとう。貴章ってお前の名のカードは何?それにお前の名前の字が大きいぞ」



長編・危険なアルバイト

知ってるヤツは知ってるが私、あやは裏のアルバイトがある。
夜の仕事・・・・お色気ではなくちょっと変った仕事。
友人の些細な仕事を手伝った事から何でも電話1本で気良く来てくれると思われてるようだ。
自分はそれを裏のアルバイトと割り切っているのだが、少々変った経験をよくする。
夜逃げの手伝い、真夜中に田んぼに突っ込んだ車の引上げ作業、はたまた酔払いを送って行くなど、夜中の誰も起きない時間に起きて手伝っておこずかいをいただく、もちろん夜間料金で、です。
今回も、そうであった。

クリスマス・イブの夜、時間は11時を回っていた。
白黒テレビはクリスマス聖歌が奏で普段と変わりなく食卓には煮物と小さなケーキが供えられていた。
これではまるでお葬式だ。
世の中ハッピーな人が家族または恋人、友人とクリスマスを一緒に送っている事でしょう。
私はそのイエスの後光の光に出来る影のような過し方だった。
一人ケーキにバクリつく。そんな時に1本の電話がかかってきた。
急に都合が悪くなったから代りに荷物を届けてほしいと友人が泣きついてきたのだ。
誰に言ってもクリスマスで都合がつかなく私に回ってきたのだと察しはつくが嫌味の1つも言ったものの断る理由も無くその臨時のアルバイトを引き受ける事になったのである。

肌に刺す寒さだと思えば外は雪花が散っていた。
今夜はホワイト・クリスマス。
私は、寒さに肩を窄め届ける荷物を取りに車を走らせた。
今夜の主役の友人は心成しかウキウキしてる感じで私を見るなり小走りで近づき「2時までにココに書いてある所まで届けてくれへんか?」と小奇麗な姿に変身してた友人は言った。
私は小汚いジーンズと婆臭い色のジャケットを着、荷物と届け先のメモを受け取り港へと突き進む。
荷物の中身を知って驚いた・・・仏像だ。
1メートル弱の高さの仏像と車内で2人きり・・・
クリスマスの日に木で彫られた仏像とデートなんて笑い話にもなりゃしない!変態だとまたレッテルを貼られてしまうのは目に見えていたが届ければ3万5千円を数時間で稼いでしまうのだから美味い話である。後ろの仏像を横目に信号で停車しては手を擦り合わせる。
拝んでるわけではない。エンジンをつけてから一時間も過ぎたのに車内はまだ冷えているからだ。
まったく暖かくならない。
手足の冷えで先が痛いのを我慢しつつ白い息と体温だけで温まて曇ったフロントガラスを肘で擦り、夜のアスファルトがライトで浮かぶ中をただひたすら走る。


一体・・・こんな仏像を運ばせる人って?
こんな時間に・・・?
何故だろう?が幾つも考えれば出てきては首を傾げたが奇妙な仕事は何時もの事だったでそんな疑問は直に消えた。


案の定
港にはデートコースになってるらしく、この日ばかりは海を眺めに来る人も多い。
2人で雪を眺める、さぞかしお熱い事だろう。その雪の中に私はいた。
「なんでやねん!寒〜う。こんな雪の日になんで荷物を運ばな〜あかんねん!寒〜う!めちゃ寒〜う」これも金のためである。
仏像を一体背中に背負ってる。罰当たりな事だが コノ時点で神も仏も捨ててるのである。呪うがいい産まれた時から不幸を背負ってるのだから〜と横降りの舞散る雪の中を仏像を背負って指定された旧8番倉庫へと歩く。
港で夜中、仏像を背負う女の姿も無気味である。
雪で約束の予定時刻よりも15分過ぎ遅れて入ったが誰も居なく静まり返っていた。
「すみませーん 遅くなりましたーぁ」
小さな裸電球が寂しく点って外の透間風で揺れている。
間違えたのか?それとも時間遅れたから怒って帰ったか・・・ちょっと怖いな・・・。
返事が返ったきたのは外の風が叩く音だけ・・・
倉庫の中私の声が響いてる。
心細いのと息が詰まるような臭いを放つ倉庫の中で次第に私は再び疑問だった事を思い出し恐怖に変った。
ゆっくりと眼だけ動かし辺りを見渡し息を呑んだ。
変だよね・・・・こんな時間に一人でって指定されるのって
やっぱ こんな港の倉庫に女一人来るのは危険か!
もし、物陰から怖い兄さん出てきたらどうしよう!
まわされたらどないしょうと後悔の2文字が浮んだ。
後悔!後悔!相手は得体の知れない人物!外国人!売られる!荷物にされて異人さんに売られてしまう。1000円で売られちゃう!!そんな安値で売られてたまるか!ここから逃げなきゃと後退りした時
「ご苦労でしたね」と天界から神の声が下った。
罰が当ったかぁ!と驚いて天を見上げたら。
そこには神が・・・ではなく、ゆっくりと老紳士が階段から降りてきたではないか、その方は赤い中国服を身に纏いまるで七福神の布袋様のようなお姿に安堵を覚えた。
「陳さんですか?遅くなってすみません。」と肩や頭に積った雪を落としながらお詫びした。
優しく微笑みかけ「雪で大変だったでしょう・・・」と労いの言葉に今までの不安が消えた。
ええ〜お人やないか〜ぁ(涙)疑った 疑った私が悪〜ございました!と反省し荷を下ろそうとしたら「いやいや ココではありません。ご面倒ですが船まで運んではいただけませんか?」と言うのである。
仏像・・・外国へ送るのか?
貿易商のようだが?
鬱蒼とした倉庫の中を見渡すと古美術品が所狭しと並んでいるではないか。
嗅いだ事のない匂いの元はこれか・・・棚には薄青色の影青(インチン)の壷が置いてあり、よく目を凝らしたら可愛い唐児が無邪気に遊んでる粉彩小皿が飾ってあった。緊張と不安で回りが見えなかったのである。
「貴章 案内してあげなさい」と老紳士は言った。
「はい」と奥から返事が返った来た。
物陰から倉庫の電球の光の前に出てきた男は私に命令口調で「付いて来い!」と言ってさっさと先に歩き出し倉庫の出入り口の方に向った。
「えっ?ああ・・・では」と老紳士に私は会釈をしソノ男の後を追う形で付いて行ったのであるが先に先にと歩く男にだんだん腹がたって来た。
私は雪の中を仏像を運んでいるにもかかわらず歩くスピードは一定の速度、「重いですか?」「手伝いましょうか?」ぐらい気にかけろ!それに この静まり返った空気をなんとかせい!とその男の後頭を見ながら思ったが言葉には出さなかった。
傘も何も持たず雪の中を歩く。
次第に足下は雪が積ってきて歩いて来た足跡が付いている。
沈黙という静けさは好きではない、しかたがないので男に声をかけた「あの〜中国の人なのに流暢な日本語ですね。ほら 長く棲んでいても、そ〜アルね〜ェ とかそーカモね〜ェとか言いますでしょう?」と言ったら「無駄口を叩く暇があるなら歩け!」と針のような視線で睨まれた。
怖えええ!!なんて目つきの悪い!ヒネタような口元、七三分けの髪型、黒シマのスーツ!!名前たしか貴章って言っていたよね。・・・陳・・貴章?ガキの頃、畜生とか言われて虐められた?たぶんそうだな・・・ってブツブツ思うては傷付いた自分を慰めながら目的地の船着場にたどり着いた。
幾つか小船が波に揺られて綱に繋がれ止っている。
男は立ち止まり、1艘の船に指差した。おい!最後までお前が運べって言うのかい!涼しげなヤツに思えるがこの寒さでこの男が鬼だ!と確信した!鬼の他には何があろうか!
船に仏像を運び入れ、かじかむ手で古い毛布のような物で仏像を包みソレを一人で木箱に入れて荷造りをした。まるで肢体でも始末をしてるような後ろめたいような感じがした。
船を下り「修了しました」と疲れ果て一層白い息が出る私に、貴章はスーツの内ポケットから茶封筒を差し出した。
やった!
お金だ!
その封筒を両手で受け取っり血と汗とで稼いだ私の勲章!!顔から嬉しさが溢れ。
仕事をしたって充実感!この感じが好きで仕事をしてると言えよう。
中身をその場で確認した。
3万7千円・・・・あれ?
「あの〜ぉ」
「なんだ?」
「・・・2千円多いんですが」
と余分の夏目漱石2枚を返そうとしたら、「それで 何か暖かい物でも食べなさい」と言いた。
えええ!!!
なんて――――紳士なんだ!ええ〜お人やないか〜(涙)
疑ったり悪口言ったり汚れている!私は汚れきっている!と深く深く反省をした。

帰りに車内のバックミラーには真っ白い雪明りの光の中で男は元来た倉庫へ戻って行く姿が深く印象に残った。

――――――
帰りは
その2千円でオロナミンC ドリンクを飲んだ。
やっぱり謎のような仕事には謎のような人間が多い。
あの神様もそうだし
あそ ヒネた男もそうだが
普通の暮しではないみたいだ。

普通の暮らし?

たぶん・・・普通の暮らしってのは無いのかもしれない。
これが、私にとって普通なのかもしれない。
そして・・・彼らも
夜が明ければ私は会社へ行かなければいけないのに・・・・
自分は何をやってるんだかと苦笑した。
時刻は4時40分を過ぎまだ夜は明けない。


そして・・・
鼻歌でクリスマス・ソングを歌う。



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